この船の特徴は荷物を運んで運賃をもらうのではなく、現地で買い付けて販売すると いう商人の船だということです。
このため船主たちは情報格差による産地と消費地の価格差を利用して大儲けをしたそ う。しかし 明治に入って次第に海路から陸路での鉄道輸送が発達し、電信・郵便による情報格差 がなくなってくると廃れていきました。
後期になると北海道からの産物を補給のための寄港地で販売するようになり、各地で 北海道の産物による食文化が花開きました。
新潟のお隣、富山県の文化
水や食料を補給する寄港地の一つである富山県は全国的にも昆布の消費量が一番。
昆布巻きはもちろん、蒲鉾に巻きこんだ昆布蒲鉾などが食卓の定番となっておりま す。
市内のスーパーをのぞくと多様な昆布巻き、昆布蒲鉾が散見されます。
【富山湾】
富山湾は“天然のいけす”といわれ、能登半島が突出しているおかげで冬でも海があ まり荒れず、新鮮な魚が手に入ります。
また水深が深いところで1200メートルと深く、相模湾、駿河湾と並び3本の指に入る深海の湾で多様な魚が生息しています。
そんな多様で新鮮な魚と北海道の昆布をコラボレーションさせてしまう先人の知恵に は頭が下がる思いです。
昆布とともに運ばれた“身欠きにしん”も昆布巻きに欠かせませんし、山菜などと一 緒に煮た郷土料理が日本海沿岸の春の定番料理となっております。
身欠きにしんはニシンを三枚におろし、釣針のような針で引っ掛けて干し上げます。 保存は利きます。 その分料理に使うのに手間を要します。 身欠きにしんを米のとぎ汁に一晩漬けます。
こうしてやわらかくなったにしんはうま味が凝縮されているし、よいだしが出ます。
これを山菜や昆布などと一緒に醤油、砂糖で煮つけるわけです。
美味しいですよ。
日本海沿岸ではあまりとれない昆布やにしんが、この地域の郷土料理として昔から愛 されていることはすごいことです。
今では陸路を通って毎日のように北海道からの産物が運ばれてきます。
当たり前のように食卓に上がって、舌べろで感じる美味しさだけではなく、このよう な文化を知っていると同じ料理でもより美味しく感じられるのではないでしょうか。